ヤマサクマイニチ170 2020年6月9日(火)努力はひとを裏切るが裏切られた程度でやめられるほど素直でもないのだ

「岩にしみ入る蝉の声」
と言ったのは松尾さん

ここしばらくの間
「岩に染み入る俺の声」的な
どんどん力を吸われているような感覚
無力感にさいなまれている演者さんは
多いと思う

俺だって例外じゃない
部活で走らされた砂地のような
俺ってこんなに走れなかったっけ?
脚ってこんなに重かったっけ?
むしろくるぶしくらいまで
うまっちゃってるんですけど…な感覚
なつかしい
はずがない
俺は部活で砂地を走ったことは多分ない
剣道をしていた月出小学校も錦ヶ丘中学も
熊本南署でも練習中に
海へ行けるような立地ではなかったのだ
この感覚が懐かしいのはおかしい

この感覚は

そうか 思春期に自分が何者なのか
もがいた頃
世の中になんの影響も与えられないことに
気づきたくなくておかしなことをしたり
奇声を発したくなったりした頃

東京ですごいやつらに出あって
到底太刀打ちできないことを
認めたくなくて貧しさにもやられてた頃

そのすごかったはずの奴らが
家をついで音楽をやめたり
先生になったりして
第一線から離れていくのを見送ったとき

もっともっと真面目に音楽をやろう
俺に凄みを下さいと願って進み始めた矢先に
東北の震災が起きたとき

そうかこれまでも
いっぱい染み入っちゃってきたんだな
俺の声

岩に染み入った蝉の声や俺の声は
なにかはずみで岩を割ったりしたら
ゲボゲボゲボーとかって出てくるんだろうか
押入れの中のゼンマイ式のおもちゃが
急にジージージージーって
横になったまま歩き始めて
肝を冷やしたことが何度もあったけれど
あんな感じで急にミーーーーーって
死にかけの蝉みたいに鳴き出す岩 気持ち悪いな

さておき 吸われるなら
もっとたくさん出すしかない
音楽にも努力賞はないのだ
染み入るぶんだけ余分に出す

努力はひとを裏切るが
裏切られた程度でやめられるほど
素直でもない俺たちなのだった

読んでくれてありがとう
あなたに伝わることは
救いになっています

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