前回の作品集『山作戰』を発売したのは、2009年の1月だそうです。
たしか、作るぞと言ってから八年以上かかりました。
そのことを考えると、そのあと3年と半年弱でつぎの作品集を発売することができたのはすごいことだと思います。
今回無理して短期間で質を上げようとし過ぎたので、多分あばらとか折れたり指紋がなくなったり、畳をむしったり 少しどもったりとかしてると思います。
今回の『山作業』は前作よりさらに個人的なものになったと思います。お友達がますます減ったので、欲しい音は全部自分で演奏しなければいけませんでした。
しかも機械に演奏してもらう箇所をできるだけ排除すると決めてしまっていたので、ストリングスとフルートの音以外は全部そのとおりに演奏して録音するか、録音した波形をパソコン上で切ったり貼ったりして作りました。
うたに関しては前回の作品集のときに何に対してかわかりませんが遠慮して出さなかった感情の部分を押し出すことにしました。前回はずかしかったということはないんですが、自分ひとりの作品ではないということで、個人的な部分よりも普遍的と思える部分を優先して控えてしまったみたいです。
今回、天秤にかけるのも変なはなしですが、出 したい感情のためには少々ピッチが狂っていても構わないとすら思った。その変なテンションのせいで作業の終わりの頃にやっぱり気になって随分録り直しすることになって、ミックスが進むにつれて喉がくたびれていくという変な状態になってしまいました。それでもぼくなりにはかなり気持ちをうたに表したつもりです。
このうたの表現に対する変化はずっと都会にいたらきっとなかったと思います。弾き語りっぽい感じで曲を収録しよう なんて気にも、東京に住み続けていたら絶対ならなかったと思う。これは良い悪いじゃなくて変わっただけなんですけど、今後にも大きく関わるはなしなので自分自身 が変化のその後に注目しています。
長く自分の独りで作業していると、これがうれしいのは自分だけなんじゃないか?と不安になります。そこで録音の途中から、一緒に暮らしているバンド好きのイン子さんとマネージャー鳩子さんに聴いてもらい、意見を参考にしながら作業を進めました。最初は「わたしは素人だからわかんないけど詳しいひとはどう思うか…」みたいなことをくねくねおっしゃっていましたが、何度も通いつめ、雪の日に門の前で正座して待ち、作品の世界観を表現するのにどうしても必要だと理解してもらうことができ、やっと脱いでもらえました。
あとで気づいたんですが、逆に音楽の演奏や録音にたずさわっているひとには出来上がってマスタリングの依頼をするまで聴いてもらえてませんでした。マスタリングというのは出来上がった音声をCDにするのに適した音質に整えてもらうような作業です。
そういった意味で音楽的な部分の責任はまったくもって全部ぼくが負う感じ。
全然そうしようと思ったわけじゃないけどそうなりました。
もし評判が悪ければ腹を切ることになるでしょうし、評判が良ければきっとかなり調子にのってしまうくらいにいまの自分そのもの…。
そんな作品集です。