ヤマサクマイニチ112 2020年4月10日(金)ブリッと温めて事件(前編)

前から応援して下さっている方は
ご存知の方も多いと思うが
俺は20代の頃
深夜のコンビニでバイトをしていた時期があった

22時少し前にお店へ行って
夕方から入ったチームと交代
明けて8時
朝の1つ目のピークを終えた後
午前中から入るチームと交代
というシフト

入店して半年は経っただろうか
すでに業務に慣れたある日
業務開始の22時より少し前に店に着いて
レジの前を通ると
見慣れない美人がレジの中にいた

副店長が備品のことを教えているようだ

新人さんか きれいだな
と思って通り過ぎる
あとで聞いたのだが
彼女はお嬢様で大学生
社会勉強のために
わがコンビニでバイトをするらしい

そんなひとがいるんだなあと感心した

が この子が本当にすごかった

キリッとした和風美人のKさん
聡明に見える顔立ちに反して
ものすごい勘違いやミスをする
おでんの具の名前を知らなくて
具が間違っていたと苦情が来る
ガムを1つ買ったお客さんに
なぜか一番大きな袋に入れて渡してしまう
タバコの銘柄もことごとく間違った
「いままでどうやって生きてきたんだろう」
と店のみんなが口を揃えて言う
めずらしい子だった

朝のコンビニは
近くのオフィスで働く
会社員さんのピークの前に
現場に向かう土木関係の人々のピークがあった
土木関係のひとたちのピークを終えて
会社員さんのピークとの合間に
おれたちは朝のひとと交代
という感じだったと思う

土木関係の方は
確実に怖いおっさんが多くて
バイトをはじめてすぐはびびった

けれどそのうちだんだん慣れてきて
あいさつをしたり
冗談を言ったりしてくれるひとも増えた

その中でも一番と言っていいくらい
怖いかったのが
ブリトーおじさん

彼は毎朝8時前くらいに来て
必ず牛乳とブリトーを買って行った
ブリトーは小麦粉の薄い皮で具を巻いた料理
細長い袋に入っていて
袋の端を少し切って
レンジで温めて渡すのだが
そのおじさんは怖い顔で
「ブリッと温めて!」と言うのだ

ダジャレなのか 彼が本当にブリトーを
「ブリット」と思ってるのかはわからない
最初はどう反応していいのか戸惑ったが
だんだん慣れてくると俺も
「ブリッとですね!」
と返して温めた
すると彼は
(温めたブリトーと牛乳の袋は)
「一緒に入れていいよ」
と必ず言うのだった

あるとき夜中の納品の量が多く
夜中も忙しかったんだと思うが
8時の交代の段階で
深夜組の作業が終わってない日があった

早めに来た社員と
少しだけ業務に慣れたものの
やはりポンコツだと評判のKさんが
助っ人でレジに入ってくれた

相変わらずタバコを間違いまくるKさん
しかし綺麗なので
はじめて対応するおじさんたちも
ことごとく鼻の下を伸ばす

俺たちが品物を棚に出し終わって
ダンボールを潰しているとき事件は起きた

レジ前にはブリトーおじさん
「おーーおーーー」と大きな声で叫ぶ
驚いて後ずさるKさん
深夜のシフトに一緒に入っていた
もうひとりのバイトが駆け寄る

直後レジの中から爆発音!

焦らす気はないが長くなったので
また明日の未明ごろに

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