友達が漱石の夢十夜の文体で夢の話を書いていた
古文書を読んで歴史を研究する方なので
旧仮名遣いも美しく
毎日楽しみに読んでいる
そういえば俺が何度も見る夢がある
せっかくなので一応
有名な書き出しから書いてみる
こんな夢を見た
その夢には毎回同じ学校が出てくる
青っぽい影に包まれた学校で
冷え冷えとした色合いのわりには
中は寒くない
東西南北に辺を向けた
ロの字型に校舎が作られていて
必ず時間帯は午後
俺の教室は南東の角にあるので
俺の夢で見る時間帯にはいつも暗い
中庭を通して反対側の教室は
夕日で赤く光っていることもある
どうやら俺が通った
月出小学校なのかも知れない
俺は学校へ行くと
みんなになぜかすごく褒められる
なにを褒められてるのか
毎回目を覚ますと忘れているの
先輩後輩同級生先生問わず
みんな褒めてくれるのだが
実はみんな誤解をしていて
俺はその褒められることを
実際はやってないのだが
みんな伝えても信じてくれず
やたらと褒めてくれて
実験教室などの前を通ると
知らないクラスにまで呼び込まれて
褒められて気まずい思いをするのだ
その学校には
北東の角の4階に
音楽室がある
他の部分はみんな3階建てなので
ここだけ1階分高い
俺たちは音楽の授業で
そこへいるのだが
これは錦ヶ丘中学校の
音楽室の位置なので
俺は
「これはなにかの間違いだから
みんなここにはいないほうがいい」
とクラスメイトや音楽の先生に
必死で伝えている
しかし先生も生徒も
俺の声が聞こえないらしく
必死で音楽の教科書を黙読していて
俺だけが教室から独りで出た刹那
背後の音楽室に雷鳴が轟き
光りと煙に包まれてしまった
教室をのぞくと煙の中に
教科書がたくさん落ちていて
煙が晴れてくると
音楽の先生だけが立っており
「みんな死んでしまったので
教室にいます」と言う
そういえば中学の音楽室に
雷が落ちたことがあったなあ
と納得をして
階段を降りて暗いクラスに戻ると
確かにそこにはクラスメイトがいて
みんな机を雑巾で丁寧に拭いている
クラスに入ってみんなに声をかけると
「髙山くんは死ななかったんだね
やっぱりすごいね」
と顔は知っているのに名前を知らない
つるっとした肌の
ショートボブの女の子が褒めてくれる
俺が
「お別れなの?」と聞くと
別な坊主頭で学ランの男の子が
「死んだからってもう一回
同じ学年をやればいいから平気だよ」
と言う
夢の中の俺は
「そうか平気なのか」と納得して
俺は死ななかったので
机を拭かなくていいのだな
と少しうれしく思いながら
教室を後にしたのだった
それではまた 明日の未明頃に