眠れない夜が明けても

久々に肌寒い朝のベランダに出て
眠れないここのところの自分を笑う

この街へ来て幾度目かの春が過ぎても何一つ
なくしたものはないと言い切ってみようか

鉛色の空を見上げ形だけの伸びをしても

出会い別れていくことこそが
ヒトのすべてとあなたが言う
僕は上の空で世を憂う
冷えて見えた景色に
温みを乞う

僕が高い場所を怖がる訳は
軽はずみに飛び降りそうな自分が止められないから
ベランダから眺める景色の中に
いっそ溶けてしまいたい自分が目を閉じるまで
独り遊ぶ子供のように
電話の画面に見いる老人から
目を反らす

胸に刺さるあなたの
その場しのぎの優しさは
僕の思想を削るように
深く強くえぐっていく

あなたが頭ごなしに拒み
独善と言い切った何かで
あなたより生き長らえてしまった
不手際を勝ち誇る

色味の少ない
降り出さない空に
あなたの笑い方の真似をして
笑いかける

関連記事一覧

PAGE TOP